66 樹齢教の旅(1)麻生のクロガネモチにツルウメモドキ

樹齢教

私達は大地に深く根ざし高く空に聳える樹木の前に立つ時、樹霊を感じることがある。
人は、決して越える
事ができない、その齢や大きさに、あるいは、枯れては萌え出る生命力に、驚き、あこがれ、畏れを抱き、古よりそれ自身を神として、また、神の宿る依代(よりしろ)として崇めてきた。

『樹齢教の旅』は、そのような樹木を折々に訪れ、樹齢を感じ、樹励をきき、また、それらを歓びとする樹齢教の活動の一つである。 と、そこらの自然探検家阿部弘和と阿部幹雄が密かに企画中の『樹齢教の旅社』の事業である。

樹齢教の旅の注意

大きいが故に尊からず。全ての樹木や自然を大切に、また、守るだけでなく育てる事も大切にしましょう。さて、巨樹については環境庁のデ−タや出版された本も(*1)たくさんあります。それらを参考に、必要に(*2)応じ旅をしましょう。第1回目は防府市麻生を訪れました。

*1 阿部幹雄 『祈りの木』 飛鳥新社(1999)  雑誌に連載の『樹齢探検』を単行本化したものです
*2 反省時には杉のような針葉樹が、失意時にはカシのような広葉樹がおすすめです。


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大正13年、約70年前の花見の時の出来事です。置いてあったランプが倒れ納屋が火事になってしまいました。運が悪いことに、この年は雨が少なく乾燥気味で、また、おり悪しく屋根のふき替えのために置いてあったカヤにも火が燃え移り、たちまち11棟が全焼する大火になりました。その時この樹齢400年と云われるクロガネモチの下枝も燃え落ちてしまいました。

防府市から佐波川ぞいに車を走らせ、山道を5分ばかり登ると、今はたった4軒の家しかない、山間の麻生という部落に着きます。車を降りて小道の奥の、周りを竹に囲まれて、ここだけが明るい空き地に、この木はありました。高さ約31m、胸高直径約1mで、クロガネモチとしては決して巨木ではないのですが、異様な姿、それに太い蔓が巻きついています。
究極の奇怪さに驚きながら、高い梢を呆然と眺めていると、重田さん(もうすぐ90才です)が出てきて、こんなお話をしてくれたのでした。

さて、火事で枝が燃え落ちて周囲が明るくなったのをきっかけに、クロガネモチに巻きついていた藤がすごい勢いで太くなっていきました。クロガネモチの太い幹についている「へこみ」は藤が絞めた跡なのです。すごい力です。あまりにも巻きつくので、クロガネモチが可愛そうになって、昭和34年頃、重田さんは藤を切りました。その時小さなツルウメモドキも付いていたのですが、それは切らずにほっておいたら、40年たってこんな太さになってしまったのだそうです。
最初見たときは藤と思っていたのですが、直径が50cmもあるツルウメモドキです。!!秋には朱色黄色の実がなって、生け花に使うあのツルウメモドキです。信じられないほどの、きっと日本一の巨大さです。

話し声を聞いて、戦後すぐ麻生にお嫁に来たもう一人の重田さんも加わって「上の方にはミツバチが巣を造っていた時期があって、子供と一緒に蔓を伝って登って密を採ったよ」と教えてくれました。昔は子供もたくさんいて賑やかだった麻生の部落、今はすっかり寂しくなりました。それから、この木の前で夕方まであれやこれやと楽しく話をしました。帰り際にもう一度、木を見上げると暖かな何かが押し寄せたような気がしました。秋も深まった11月末の楽しい探検の一日でした。

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