575 クリスマスに贈る詩

山口県の北西の豊北町の沖合に、角島という小さな島があります。
特牛(こっとい)の港で連絡船に乗って20分、尾山の港に着きます。漁協の前を通って、小さな町並みを抜けて、舗装道路をしばらく緩やかに上がっていくと、道はだんだん平らになって、目の前にコバルト−・ブル−の海が拡がります。そして、海を右手に見下ろしながら5分ばかり歩いて、小さく左に曲がると、突然、目の前に白い灯台が現れます。

誰もいない静かな灯台の辺りに、腰を下ろすと、海の風が吹いてきて、潮騒も聞こえてきます。白い灯台に青い海。『----あの〜あの〜僕と結婚---』 『-----いいけど---』 と思わず頷いてしまうほどの(実例多数。調査済み)ロマンチックは風景です。
私は帰りの船の時間まで、この灯台に来てぼんやりと海を眺めるのが好きでした。灯台に限らず、どこでも、美しい風景を眺めていると満ち足りた、しかし、寂しい気持ちが湧いてきます。角島灯台は、そんな場所です。

しかし、去年橋が架かって、灯台の回りの草木は切られて、有料駐車場ができ、売店ができ-----、観光客で賑わって、昔の 『騙し(騙されてあげるワ)の風景』 は消えてしまいました。
今は、角島に行っても、灯台は遠くから眺めるだけにしています。

角島灯台は本州最西端にあって、日本海を航行する船が、初めて本州に着いたのを知らせる大切な灯台です。イギリス人のR.H.ブライトンが設計し、明治11年に完成した、彼の最高傑作と言われる石造りの灯台です。今は無人となった、角島灯台を詠った戸島ひろこさんの詩『夜の角島灯台』。森羅万象が贈るクリスマスの詩です。


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日本海に浮かぶ 小さな島の
古い灯台をたずねた日の夜は
耳の奥に
いつまでも潮騒が聞こえます

目を閉じれば
碧く深い海を見守ってたつ
白い灯台の美しいシルエットが
くっきり うかびます
暮れゆく海の
はるか水平線まで照らして回る
灯台の灯が見えます

そして そう遠くない昔に
その灯を守り続けていた
灯台もりの人たちのいたことを想います
くる日もくる日も
海の安全を祈って暮らす
岬の住人がいたことを

音もなく ひそやかな夜は
今はもう無人になった灯台の
さまざまな伝説が甦ります
時の彼方から
カラ カラ カラと
フレネルレンズの 回転音が
聞こえてくるようです


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